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【感想・ネタバレ】「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ」辻村深月|女性の幸せとはなにか

辻村深月さん「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ」の感想です!
ネタバレ含みますので、未読の方はご注意ください。

「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ」内容

【あらすじ】
地元を飛び出した娘と、残った娘。幼馴染みの二人の人生はもう交わることなどないと思っていた。あの事件が起こるまでは。チエミが母親を殺し、失踪してから半年。みずほの脳裏に浮かんだのはチエミと交わした幼い約束。彼女が逃げ続ける理由が明らかになるとき、全ての娘は救われる。

Amazon.co.jp「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ」

幼なじみのチエミみずほ、2人の女性による物語。

物語の大半が、母親を殺害して失踪したチエミを追う、みずほの視点から進みます。

みずほがチエミを探す理由、チエミが逃げる理由とは。
そして、タイトルの「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ」の意味とは。

事件の真相に迫るとともに、女性の生き方について考えさせられる作品です。

「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ」感想(ネタバレあり)

おすすめ度:★★☆☆☆

読んだ直後の一言。
「なんとかならなかったのかな、、泣」

チエミに救いがなくて、、
しばらく放心状態になってしまったんですよね、、

いや、みずほがいることが、せめてもの救いなのかな。

正反対の2人

躾と称した虐待を受けてきたみずほと、過保護に育てられたチエミ。
幼なじみですが、2人の家庭環境は正反対です。

共通しているのは、どちらも歪んだ親子関係ということでしょうか。
そして、その関係が悲劇を生んでしまいます。

チエミの事件と、みずほが取材する赤ちゃんポスト
最初は何がどう関連しているのか全く分かりませんでした。

「チエミが妊娠しているから逃げている」という、みずほの考えが明かされたときに「なるほど…!」と。

だから、みずほは赤ちゃんポストを継続させようと必死だったし、チエミの元恋人・大地に最後に関係をもったのはいつか聞いていたんですね。

未婚の母になることを反対されたチエミは、親と口論になります。

途中まで、チエミが母親を刺したように思わせながら物語は進みますが、実際は事故でした。

そして母親はチエミにキャッシュカードや通帳をもって逃げるように言います。
暗証番号「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ」(チエミの誕生日)を告げて。

反対はしたものの、最期までチエミのことを考えていた母親。
チエミは本当に愛されていたんですね、、

しかし、生理が遅れていただけで、チエミは実際には妊娠していなかった。
悲劇はどこから生まれてしまったんでしょう…

母親に話す前に妊娠判定薬を使っていれば、母親が産むことを認めてくれていたら、包丁なんて取り出さなければ。
読み終えた後に、どうしてもたくさんの「もしも」が思い浮かんでしまう作品でした。

女性の幸せとは

東京に出て、結婚し、フリーライターとして活動するみずほ。
山梨に残り、両親と暮らしながら、地元の企業で契約社員として働くチエミ。

現在の状況も、2人は正反対ですね。

どちらかというと、みずほは自分の力で人生を開拓してきた女性
チエミは流れるままに生きてきた女性、という印象を受けます。

どうしても、みずほが勝ち組のように見えてしまうのですが、別にどっちが良い、悪いとかはないんだと思います。

偏差値の高い高校・大学を卒業してるから良い、結婚してるから良い、正社員だから良い、子どもがいるから良い。
そうやって人の優劣を決めつけているのは、私たちの勝手ですよね。

私たちの価値はそうやって計られるものではないのではと考えさせられる作品でした。

辻村深月のおすすめ作品

辻村深月さんといえば他の作品とリンクしているケースが多いですが、「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ」に関しては独立した作品です。

同じように独立した作品で、「子ども」について描かれているのが「朝が来る」。
個人的には、こちらの方が「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ」より読後感は良い印象です。

辻村深月ワールドにたっぷり浸りたい方は、「スロウハイツの神様」。
こちらは、他作品とのリンクも楽しめます。

リンクがある作品って結構重めの内容が多いんですが、「スロウハイツの神様」は比較的楽しく読めます。
まだあまり辻村作品を読んだことない方におすすめ。

まとめ

以上、辻村深月「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ」の感想・解説でした!
チエミとみずほの友情に涙。2人には幸せになってほしいです…!

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きらり
  • サイト「KIRARI」の中の人。
    読書が好きで、読んだ本の感想を投稿しています。