【感想・ネタバレ】「希望の糸」東野圭吾|その糸は決して離れない
東野圭吾さん「希望の糸」の感想です!
ネタバレ含みますので、未読の方はご注意ください。
「希望の糸」内容
【あらすじ】
Amazon.co.jp「希望の糸」
小さな喫茶店を営む女性が殺された。
加賀と松宮が捜査しても被害者に関する手がかりは善人というだけ。
彼女の不可解な行動を調べると、ある少女の存在が浮上する。
一方、金沢で一人の男性が息を引き取ろうとしていた。
彼の遺言書には意外な人物の名前があった。
彼女や彼が追い求めた希望とは何だったのか。
「赤い指」「新参者」などで知られる刑事・加賀恭一郎シリーズの1作。
2019年に刊行、文庫版が2022年に発売されました。
本作は加賀の従弟の刑事・松宮脩平が主人公となっており、スピンオフ作品に位置づけられています。
そのため、他の加賀恭一郎シリーズを未読の方も読みやすいのではないかと思います!
とある殺人事件に絡んでくる家族の謎。
一方、松宮自身の出生の秘密にも迫る作品となっています。
「希望の糸」感想(ネタバレあり)
おすすめ度:★★★★☆
作中では、“殺人事件の真相”と“松宮の出生の秘密”という、2つの話が並走します。
この2つの絡ませ方がお見事!
「家族とは何か」「愛とは何か」を考えさせられる作品でした。
血縁や時間では表せない人同士の繋がり
印象に残っているのは、芳原真次(松宮の生物学上の父)が言ったと語る、松宮の母・克子のセリフ。
「たとえ会えなくても、自分にとって大切な人間と見えない糸で繋がっていると思えたら、それだけで幸せだって。その糸がどんなに長くても希望を持てるって。だから死ぬまで、その糸は離さない」
「希望の糸」本文より
まさに、小説タイトルの元にもなっている言葉ですね。
この「見えない糸」は、松宮と真次に限らず、作中のさまざまな繋がりにも当てはめられるのではないかと思います。
血の繋がりはないものの、親子として過ごしてきた汐見行伸と萌奈。
実の親子ではあるものの、別々に生きてきた花塚弥生と萌奈。
“繋がっている”という意味では、亡くなってしまった尚人・絵麻・怜子と汐見や、表立った関係ではなくても愛し合っていた芳原正美と森本弓江も当てはまるかもしれません。
血の繋がりや一緒に過ごした時間は関係ない、人と人との深いつながりが“糸”という言葉で表されています。
この“糸”という言葉に救われるなーと思います。
松宮の成長ぶりも見どころ
そして、本作を読んで思ったのが「松宮、本当に良い刑事になったな~」ということ。
「前にいわなかったか。刑事というのは、真相を解明すればいいというものではない、取調室で暴かれるのではなく、本人たちによって引き出されるべき真実というものもある。その見極めに頭を悩ませるのが、いい刑事だ」
「希望の糸」本文より
上記は加賀の言葉ですが、前に言ったのは「赤い指」でしたっけ?(記憶曖昧なので違うかも)
犯人を捕まえただけでは終わらせない。
そして、さらに奥にある真相に気づきつつも、関係者のことを想って行動する。
まさに今までの加賀そのもの、という感じでかっこよかったです。
加賀にも褒められて、松宮は嬉しかったことでしょう(笑)
まとめ
以上、東野圭吾「希望の糸」の感想・解説でした!
スピンオフではあるものの、加賀も気になる人物に話を聞きにいく(結果的に犯人の自供に繋がった)など、しっかり活躍されていますね!