【感想・ネタバレ】「ラッシュライフ」伊坂幸太郎|繋がる人生のリレー
伊坂幸太郎さん「ラッシュライフ」の感想です!
ネタバレ含みますので、未読の方はご注意ください。
「ラッシュライフ」内容
【あらすじ】
Amazon.co.jp「ラッシュライフ」
泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場――。並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。
2009年に映画化もされた、伊坂幸太郎の初期代表作。
泥棒、宗教信仰者、女性カウンセラー、失業者。
仙台の街を舞台に、基本的には4つの視点からそれぞれの物語が並走します。
3章に区切られていて、章の頭には画家と画商の話も描かれていますね。
一見繋がりがないようで、徐々に各物語が絡んでいく感じが面白いです…!
「ラッシュライフ」感想(ネタバレあり)
おすすめ度:★★★★★
正直、最初の方は展開が読めなさすぎて「つまらないかも…」と思っていました。
が、繋がりが見えてきた2章目ぐらいからが、もう面白くて面白くて。
後半はあっという間でしたね…。
人物同士の関係性や、時系列を解釈するのに時間を要する作品だと思うので、少し整理しながら感想書いていきます!
4つの人生のリレー
各章の冒頭に登場する戸田&志奈子の物語に加え、基本的には以下の4つの物語が並走します。
・河原崎&塚本 →「神」と称される高橋を解体しようとする
・黒澤&佐々岡 →同級生。黒澤が泥棒仕事をこなす中で、佐々岡に再会
・青山&京子 →不倫関係にあり、青山の妻の殺害計画を企てる
・豊田 →偶然手に入れた拳銃で、リストラを宣告した舟木を撃とうとする
そして、それぞれの物語は時系列通り進んでいるわけではありません。
完全にバラバラです。
大雑把ですが、主な出来事を人物・時系列でまとめると以下になります。
ちなみに、戸田&志奈子が仙台駅に到着したのは4日目です。(豊田に話しかけているため)
冒頭で戸田が読んでいる新聞にも、彼らそれぞれの出来事が書かれていますね。
・ピッキング窃盗犯が日本を北上中 →黒澤
・バラバラ殺人事件の続報 →河原崎(&塚本)
・夫婦で死体を隠蔽 →青山&青山の妻(&京子)
・四十億円の当選くじ →塚本から黒澤、黒澤から豊田にわたったもの?
最終的に時系列を判断する手がかりとなるのが、
・河原崎が車の中で豊田に話した内容
・各人物がスケッチブックに文字を書いた日
かと思います。
こうして整理すると、
・1日目 →河原崎
・2日目 →黒澤
・3日目 →京子
・4日目 →豊田
がそれぞれメインストーリーになっているんですよね。
これは終盤で登場する、佐々岡の以下のセリフを反映していると思います。
「昨日は私達が主役で、今日は私の妻が主役。その次は別の人間が主役。そんなふうに繋がっていけば面白いと思わないか。リレーのように続いていけばいいと思わないか?人生は一瞬だが、永遠に続く」
「ラッシュライフ」本文より
良いなと思うのが、「父からバトンを受け取れなかった」としている河原崎が、作中ではいわゆる第1走者であること。
きちんと次の人物へリレーを繋いでいるんですよね。
佐々岡が重要人物
先ほども佐々岡のセリフを取り上げましたが、本作って結構佐々岡がキーになっていますよね(笑)
佐々岡は黒澤の同級生であって、現在は京子の夫。
(黒澤の話を聞いて離婚を決意しましたが)
さらに、黒澤と再会を果たせたのは、河原崎が彼に住所(実際は隣の部屋)を教えたからでした。
また、佐々岡はかつて戸田の画廊に勤めていた人物でもあります。
多くの登場人物と関係があり、物語を繋ぐ役割を果たしているのが佐々岡です。
エッシャーの騙し絵
この作品自体がエッシャーの騙し絵みたいなものなんですが(笑)
個人的には、登場人物たちが最後にエッシャーの騙し絵について考える部分が好きです。
それぞれ、注目する部分と考えることが違うんですよね。
河原崎 →入口に1人でいる兵隊を見て、「人を待っている」と思う
佐々岡 →行進している兵隊たちを見て、「みんなが繋がっている」と思う
京子 →行進している兵隊たちを見て、「何も考えずに歩き回っている」と思う
豊田 →離れて行進を見ている男を見て、「自信を持った姿に憧れた」と思う
とくに面白いのが、同じ行進している兵隊たちを見ているのに、夫婦である佐々岡と京子が全く違う感想を抱いていることですよね。
現在の状況や感情によって、絵の見え方も変わってくるんだろうなと思います。
伊坂幸太郎のおすすめ作品
本作品に登場する黒澤は、伊坂幸太郎の他の作品にも登場しています!
個人的に、黒澤の考え方がすごく好きなんですよね、、、
・重力ピエロ
・フィッシュストーリー
・首折り男のための協奏曲
・ホワイトラビット
筆者のイチオシは「ホワイトラビット」です。
仙台市内で起きた立てこもり事件。
星のうんちくを語る男に、やたらに出しゃばる語り手など、一見ちょっと変な変わった作品ですが読んで損はありません。
後半からの怒濤の展開は、爽快感たっぷりです♪
また、佐々岡が以前に青年から聞いたという「喋るカカシ」の話は、「オーデュボンの祈り」に繋がっています。
まとめ
以上、伊坂幸太郎「ラッシュライフ」の感想・解説でした!
結構長めだし難解ですが、伊坂作品の中で1番好きです。
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