【感想・ネタバレ】「本日は大安なり」辻村深月|結婚式場のドタバタ劇
辻村深月さん「本日は大安なり」の感想です!
ネタバレ含みますので、未読の方はご注意ください。
目次
「本日は大安なり」内容
【あらすじ】
Amazon.co.jp「本日は大安なり」
企みを胸に秘めた美人双子新婦、プランナーを困らせるクレーマー夫妻、新婦に重大な事実を告げられないまま、結婚式当日を迎えた新郎……。人気結婚式場の一日を舞台に人生の悲喜こもごもをすくい取る。
11月22日(いい夫婦の日)、大安。
ホテル・アールマティにて結婚式を挙げる4つのカップルの物語です。
幸せに満ち溢れて見える式の裏で、内面ではそれぞれ色んな想いを抱えている。
4つの視点から、話が同時に進んでいきます。
「本日は大安なり」感想(ネタバレあり)
おすすめ度:★★★★☆
有川浩さんの「阪急電車」の結婚式場ver.みたいな感じだな~と読み進めていました(笑)
それぞれのシーンが少しずつ交差して、小火騒ぎをきっかけにすべてが解決。
まさか、オーブンの不具合が伏線になるとは思いませんでした…!
こういう細かいところに忍ばせてくるのは、さすが辻村さん。
「大安」と「結婚式」というテーマだからか、ラストが皆ハッピーエンドなのもいいですよね。
あと、この本は全体的に男性キャラクターがかっこいいなと思います(笑)
細かい感想をどうまとめようか迷ったんですが、4つの視点別に書いていきますね!
相馬家・加賀山家
見た目がそっくりな美人双子姉妹の物語。
途中までは妹の妃美佳視点、後半からは姉の鞠香視点でも話が進んでいきます。
式を挙げるのは妹・妃美佳ですが、2人は入れ替わっていて姉・鞠香が新婦役をしています。
このパートは辻村さんならではの繊細な心理描写が活きていますね。
双子とか姉妹って、親友のようでライバルのような、不思議な関係だと思います。
そして、その心のわだかまりを溶かす新郎・映一がかっこよぎます。
誰1人見抜いていなかった2人の入れ替わりを、彼は唯一見抜きましたもんね。
ちゃんと妃美佳と映一で結婚式を挙げて欲しいなーと思ったので、エピローグでその記述もあって嬉しくなりました(笑)
個人的に、鞠香にも幸せな相手が出来て欲しいです…!
十倉家・大崎家
こちらは、ウエディングプランナーの山井多香子視点で話が進みます。
式を担当するカップルの新婦・大崎玲奈は、なにかと文句を付けがちな面倒なお客様。
おまけに、多香子の元カレの浮気相手(この浮気が発覚して多香子は自身の結婚式を中止した)という…。
序盤はとにかく玲奈に悪い印象しか抱けないんですが、多香子へのサプライズから一気に好印象に変わりました(笑)
玲奈、不器用なだけでめっちゃ良い人じゃないですか…。
あとは、苦手な玲奈に対しても真剣に向き合ったり、小火騒ぎ後にもう1度式を無料提供すべきだと提案する、多香子のプロ意識の高さに感動しますね。
そんな多香子を密かにサポートする、同僚・岬も良いキャラしています。
終盤からエピローグの展開、とても嬉しくなりました…お幸せに!
このパートだけは、女性のお仕事小説らしさも感じられました。
東家・白須家
新婦・りえちゃんの甥である、小学生・白州真空の視点で話が進みます。
お色直し後に身に着けるカチューシャを隠し、リングボーイとして式に出た時は指輪を落とそうとわざと転んだ真空。
最初は、真空がりえちゃんのことが好きで結婚して欲しくない?のかと思ったら、違いましたね。
真空は、新郎の東がりえちゃんを不幸せにする“よくない人”だと思い込み、彼女を守ろうとしていた。
子どもながらのピュアな想いに、心が温まるお話でした。
最終的には東を信頼して、りえちゃんを託そうとする真空。かっこいいです。
サプライズを仕掛ける東もまたかっこいい。
玲奈もそうですが、この小説、最初に印象悪い人こそ後になって好感度が急上昇しますよね(笑)
そして、このパートでかっこいいのは狐塚と恭司もですね〜。
正しい判断を下そうとする狐塚と、相手の想いを尊重しようとする恭司。
考え方はそれぞれ違うけど、良いコンビだなと思います。
鈴木家・三田家
夕方から式を挙げる予定のカップルの話。
こちらは、新郎の鈴木陸雄視点で進みますね。
もうこの話は、陸雄がしょうもないやつですね。
先ほど、この本は男性キャラクターが良いと書きましたが、陸雄だけは別。最悪です。
でも、そこを最終的に恭司がすかっとさせてくれました(笑)
陸雄の妻・貴和子は彼の浮気に気づいていた。
そして、ボランティア活動を通じて知り合った恭司(正確には「月ちゃん」を間に挟んでですが)に頼んで、陸雄の目を覚まさせようとしていました。
陸雄が「接待ゴルフ」に行くと言って出てきた話と、恭司が持っていたゴルフクラブがここで繋がるとは…
エピローグでは無事に貴和子と仲直りし、子どもも生まれ、アールマティで式を挙げようとする様子が描かれていましたね。
うん、まあ、結果的には良かったのかな。
浮気相手のあすかだけがちょっと可哀想ですが(笑)
「本日は大安なり」他作品とのリンク
「本日は大安なり」の内容や登場人物は、以下の作品とリンクしています。
・子どもたちは夜と遊ぶ
あと、リンクというほどではないですが、貴和子と妃美佳が出身の礼華女子高校は、「名前探しの放課後」で椿が通う学校でもあります。
ちゃんと世界が繋がってるんだな~。
「子どもたちは夜と遊ぶ」とのリンク
本作に登場する狐塚と恭司は、「子どもたちは夜と遊ぶ」にも登場しています。
狐塚の本名は狐塚孝太、恭司の本名が石澤恭司ですね。
恭司の友達とされている「月ちゃん」も、「子どもたちは夜と遊ぶ」に登場する月子のことです。
2人が真空と話を始めた時に
恭司「なんで?これも何かの縁じゃないか。俺、子供好きなんだ」
「本日は大安なり」本文より
狐塚「初耳だ」
恭司「お前が留学してる間に好きになったの。いろいろあったんだって、俺も」
という会話をしていますが、この「留学」のくだりは「子どもたちは夜と遊ぶ」で描かれています。
作中の時系列でいうと、「子どもたちは夜と遊ぶ」→「本日は大安なり」です。
↓ネタバレ感想はこちら
ちなみに、名前は明かされていませんが、恭司は「ぼくのメジャースプーン」にも登場しています。
上記の「子供が好きになった」発言は、「ぼくのメジャースプーン」で小学4年生の「ぼく」と「ふみちゃん」の相手をしたからですね。きっと。
恭司と同じく、月ちゃん(月子)も「ぼくのメジャースプーン」に登場しています。
作中の時系列的には「子どもたちは夜と遊ぶ」→「ぼくのメジャースプーン」→「本日は大安なり」ですね。
↓ネタバレ感想はこちら
まとめ
以上、辻村深月「本日は大安なり」の感想・解説でした!
個人的には、狐塚が出てきたのが嬉しかったです(笑)
恭司や月子は「ぼくのメジャースプーン」でその後が見られますが、狐塚だけは描かれていませんでしたもんね。
相変わずの好青年でした(笑)
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