小説

【感想・ネタバレ】「丸の内魔法少女ミラクリーナ」村田沙耶香|不思議な世界へいらっしゃい

村田沙耶香さん「丸の内魔法少女ミラクリーナ」の感想です!
ネタバレ含みますので、未読の方はご注意ください。

「丸の内魔法少女ミラクリーナ」内容

【あらすじ】
36歳のOL・茅ヶ崎リナは、オフィスで降りかかってくる無理難題も、何のその。魔法のコンパクトで「魔法少女ミラクリーナ」に“変身”し、日々を乗り切っている。だがひょんなことから、親友の恋人であるモラハラ男と魔法少女ごっこをするはめになり…ポップな出だしが一転、強烈な皮肉とパンチの効いた結末を迎える表題作ほか、初恋を忘れられない大学生が、初恋の相手を期間限定で監禁する「秘密の花園」など、さまざまな“世界”との向き合い方を描く、衝撃の4篇。

Amazon.co.jp「丸の内魔法少女ミラクリーナ」

表題作は、女子なら子どもの頃に誰もがやったであろう、「魔法少女ごっこ」を30歳を過ぎても続けているOLの話。

そのほか、3作の短編が収録されています。

「丸の内魔法少女ミラクリーナ」感想(ネタバレあり)

おすすめ度:★★★☆☆

全編を通して、Crazyな村田沙耶香ワールドが広がっています(笑)

どれも不思議な世界観なんですが、現実の自分たちとリンクする部分があるのも面白いところ。

笑って読めるようで、結構考えさせられる部分も多いんじゃないかな。

1作ずつ、印象に残った台詞や感想を書いていきますね。

丸の内魔法少女ミラクリーナ

主人公の「茅ヶ崎リナ」は、36歳の丸ノ内OL。

小学生の時におこづかいで買った“魔法のコンパクト”をポーチの中に忍ばせ、いわゆる“魔法少女ごっこ”を未だに続けています。

残業を頼まれたらトイレに駆け込み、コンパクトを取り出し、同じくポーチの中に忍ばせているポムポム(という豚のぬいぐるみ)と会話。

「早くそのデータを入力して、彼や、他の皆を助けてあげるんだよ!がんばって、ミラクリーナ!」
「わかったわ、ポムポム!」「皆の笑顔を守るのが、私の使命だもんね!」

「丸の内魔法少女ミラクリーナ」本文より

「うわ…イタい…」って思う人もいるかもしれませんが、私は結構、この気持ちよく分かります(笑)

現実の中にちょっとした非現実を持ち込むと、心って豊かになるんですよね。

「ストレスなら毎日感じている。でも私は、それをキュートな妄想で料理して食べる方法を知っているというだけだ。」

「丸の内魔法少女ミラクリーナ」本文より

この言葉にもすごく共感しました。

お仕事小説的な内容になるのかと思いきや、意外にもストーリーは親友のレイコとその彼氏の話へ。
ラストは2人の友情にほっこりしました。

リナにはこれからも魔法少女になって日々を生き抜いていてほしいです…!

秘密の花園

同じゼミの男の子を部屋に監禁する女の子の話。

監禁されている「早川くん」は、主人公「内山千佳」の初恋の相手でした。

最初は、ただ一緒にいたい気持ちから監禁しているのかな?と思いきや、まさかの展開でした…。

「初恋を終わらせる方法って知ってる?それはね、現実の初恋の相手で、幻想を爆破するんだよ。」
「私の恋の相手は、私の頭の中にしかいないんだから。それを破壊するには、生身の相手がどれだけくだらないか、心ゆくまで味わうしかないんだよ」

「丸の内魔法少女ミラクリーナ(秘密の花園)」本文より

千佳が早川くんを監禁していた理由は、頭の中で描いていた幻想を断ち切るため

これも分かるな…。
初恋って大体幼稚園とか小学生とかそんなもんで、相手のイメージってずっと綺麗なままですよね。

実際付き合ったら、嫌なところばっかり目について幻滅するかもしれないのに(笑)

初恋はアイドルに恋してるみたいなもの、ってくだりもありましたが、たしかに推しへの感情とかもこれに似ているかも。

あと、コンビニ店員さんにもきちんと意味があって、結末も好きな作品でした。

無性教室

ちょっと星新一らしさも感じた作品。

性が廃止された学校。
クラスメートが男性なのか女性なのか分からない世界

それでも人って恋をするんだろうな。

誰かを好きに思う気持ちは、たとえ性がなくなっても変わらないのだと、切なくも愛おしくもなりました。

ラストの生々しいシーンにも美しさを感じられるのは、さすが村田沙耶香さんだと思います。

変容

これはもう本当に面白い!

若者から“怒り”という感情がなくなり、さらに、人の性格は流行と同じように隠れたプロフェッショナルによって意図的に仕掛けられているという世界。

ラストの「まみまぬんでら」の連呼に大爆笑です(笑)

まあでも、実際に言葉ってどんどん新しく生まれていますしね。

“怒り”が無くなることはないかなあと思うけど、新しく生まれたものを吸収して、時代とともに自らも変わっていくことは現実の私たちに通じるかも。

「僕たちは、容易くて、安易で、浅はかで、自分の意思などなくあっという間に周囲に染まり、あっさりと変容しながら生きていくんだ。」

「丸の内魔法少女ミラクリーナ(変容)」本文より

上記の、主人公「真琴」の夫の言葉がとても印象に残っています。

まとめ

以上、村田沙耶香「丸の内魔法少女ミラクリーナ」の感想・解説でした!

私もリナみたいにキュートな妄想で日々を乗り切っていこうと思います(笑)
そうしたら、きっと人生楽しくなる気がする…

ちょっと元気を貰える作品でもありました!

きらり
  • サイト「KIRARI」の中の人。
    読書が好きで、読んだ本の感想を投稿しています。