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【感想・ネタバレ】「私たちはどこで間違えてしまったんだろう」美輪和音|大切なものを誤って失わないために

美輪和音さん「私たちはどこで間違えてしまったんだろう」の感想です!
ネタバレ含みますので、未読の方はご注意ください。

「私たちはどこで間違えてしまったんだろう」内容

【あらすじ】
平和な田舎町で仲の良い家族、友達、近所のひとたちに囲まれ、普通の生活を送っていた仁美。
しかし、毎年恒例の秋祭りの日をきっかけにすべてが変わってしまう。何者かが祭りで振る舞われたおしるこに毒を入れ、多数の死者が出た。仁美の幼馴染みの修一郎と涼音も被害者遺族となる。事件の真相を知るべく、探り始めるが……。

Amazon.co.jp「私たちはどこで間違えてしまったんだろう」

筆者がスタンフォード大学で行われた監獄実験に着想を得て書かれたという作品です。

舞台は、住民同士がほぼ知り合いだという小さな町「夜鬼町」。

東京まで在来線と新幹線を乗り継いで3時間以上かかるという片田舎で、言い換えれば“監獄”のような閉塞的な空間です。

ある年、毎年行われた秋祭りで、配布されたお汁粉にパラコート(農薬)が仕込まれる事件が発生。

犯人が町の中にいることが間違いない中、住民同士は疑心暗鬼になり、互いを傷つけあっていきます。

「私たちはどこで間違えてしまったんだろう」感想(ネタバレあり)

おすすめ度:★★★☆☆

重きが置かれているのは、事件そのものではなく、事件のその後

犯人が誰かを推理して楽しむというよりは、登場人物の心理描写を楽しむ作品だなあと感じました。

もちろん最終的に犯人は明かされるんですが、、
なんかもう、途中から全員怪しく見えてくるんですよね(笑)

読んでいるうちに、自分も看守の1人になってしまうようです。恐ろしい、、

看守と囚人

モチーフになっている監獄実験は、閉ざされた空間で看守役と囚人役が一緒に過ごしていると、次第に看守役は看守のように、囚人役は囚人のように振舞うようになってしまうことを証明したもの。

作中では次々に囚人役が変わり、他の住民が囚人役を傷つけていきます。
最初は音無ウタ、次に博士、そしてエリカ。

最終的には、主人公の仁美もですね。

後半は、だんだん仁美が追い詰められていくサスペンス的な展開になっていきます。

だからこそ、第1章のタイトルは「看守第2章は「囚人になっているのだと思います。

“間違えない”ためには

事件と並行して描かれているのが、メインの登場人物(仁美・涼音・修一郎)の友情&恋物語

正直、事件だけだとちょっと重苦しくて読みにくいかも…と思っていたんですが、この10代ならではの甘酸っぱい青春劇があったことで楽しく読めました。

突然の10年後設定、そして仁美と修一郎が結婚していたことには驚きましたけどね(笑)

個人的には、仁美が失恋して相当傷ついていただけに、2人が再会してから恋仲になるまでの過程はもう少し見たかったです。
まあ、話の大筋から逸れてしまうのでしょうがないんでしょうけど、、

事件を通じて関係が変化し、一度はバラバラになりかけた3人ですが、10年の時を経て再び絆が芽生え始めます。

エピローグの仁美と涼音の会話にはほっこりしました。
タイトルの「私たちはどこで間違えてしまったんだろう」は、仁美と涼音に関するものだったんですね。

大切なものを失わないためにも、周りに流されそうになったら今一度自分で考えてみる

意識しようとしても難しいことですが、この本ではそれを今一度伝えてくれているのだと思います。

美輪和音さんのおすすめ作品

「私たちはどこで間違えてしまったんだろう」も実際の毒物事件を想像させるストーリーですが、同じく実際の事件をもとに描かれているのが「ウェンディのあやまち」です。

個人的には、美輪さん作品の中で1位、2位を争うほど好きです(笑)

4つの視点から、餓死事件の真相に迫っていくストーリー
こちらはミステリー要素も強く、犯人捜しも存分に楽しめますね。

↓ネタバレ感想はこちら

短編集なら、デビュー作の「強欲な羊」がおすすめです。

狼の皮をかぶった羊”をテーマにした5作を収録。

色々書くとネタバレになっちゃいそうなのですが、、とりあえず最初の「強欲な羊」は読んでみてください!きっと虜になるはず。

↓ネタバレ感想はこちら

まとめ

以上、美輪和音「私たちはどこで間違えてしまったんだろう」の感想でした!
SNSの炎上とかも同じですが、人間って恐ろしいなと思わせる作品です。

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きらり
  • サイト「KIRARI」の中の人。
    読書が好きで、読んだ本の感想を投稿しています。