【感想・ネタバレ】「捕食(ハナカマキリの祈り)」美輪和音|花のようになれても、完全に花にはなれない
美輪和音さん「捕食(ハナカマキリの祈り)」の感想です!
ネタバレ含みますので、未読の方はご注意ください。
目次
「捕食(ハナカマキリの祈り)」内容
【あらすじ】
あの女、嘘だらけよ。
抜群のページターナーが贈る、戦慄のサスペンス蘭の花に擬態するハナカマキリみたいに、まぎれ込んでしまったほうがいい、捕食者に気づかれないように。そう言って、いづみはするりとトラウマを抱えた真尋の心に入り込んできた。彼女と一緒なら、自分は変われる。いづみに憧れ、彼女のようになりたいと願ったのに……。あなたは誰? なんのために私に近づいてきたの? 不安に駆られ、いづみの過去をたどっていくと、何人もの女が、彼女の周りで姿を消していた――。真相に迫る真尋は、ついに彼女のおぞましい姿を目にしてしまう。『強欲な羊』『ゴーストフォビア』を凌駕する、戦慄のサスペンス。
Amazon.co.jp「捕食」
2013年に刊行された美輪和音さんの2作目「ハナカマキリの祈り」。
文庫版では「捕食」に改題されています。
主人公の不破真尋は、学生時代に監禁事件に遭ったことを受け、犯人に再び襲われることに怯えながら暮らしていました。
ある日真尋は、自分と同じような闇を抱えながらも、逞しく生きる女性・矢向いづみに出会います。
「いづみのようになりたい」と思い、彼女と行動を共にしていく真尋。
しかし、真尋は次第に、彼女の不審な点に気づき始めます。
「捕食(ハナカマキリの祈り)」感想(ネタバレあり)
おすすめ度:★★★★☆
1回目読んだ時は途中で大混乱しました。
どこまでが本当の人物で、どこからが成りすましなのか、、
2回目読むとすっきりすると同時に、よく練られてるな~と感じます。
この楽しみ方ができるのは、絵が見えない小説ならではですよね。
そして、美輪さん作品の中では今のところ1番グロ描写多めな気がします、、死体処理のシーンで、フードプロセッサーを見て「これでハンバーグを作ってくれたことがあった」とかやめてくれw
あと、加地が良い人すぎる、、
良い人すぎて、紅子と関係があるのかと一瞬疑っちゃいました。すみません!
花に擬態するハナカマキリ
真尋の前で「矢向いづみ」と名乗っていた『彼女』の正体は、棟居紅子。
棟居紅子→棟居聖子→黒木美砂→佐藤麻里奈→矢向いづみ
と、それぞれに成り代わって生きてきたわけですね。
そして、紅子とは真反対の人物として描かれているのが、大久保希恵。
しっかり自分を持っている希恵さん、かっこいいですよね。
個人的にはすごく好きな人物でした。
「だからまぎれ込んでしまったほうがいいの、ハナカマキリみたいに。普通の女のコたちと同化すれば、捕食者に気づかれないから」
「捕食(ハナカマキリの祈り)」本文より
上記は「矢向いづみ」として語った紅子の言葉ですが、まぎれ込んでいるのは紅子自身だったんですよね。
そして、誰かが紅子の真実に迫り、まぎれ込めなくなってくると、関係する人物を次々に殺してきた。
自分が安全に生きていくために。
うーん、恐ろしいです…
紅子はなぜ誰かになり続けてきたのか
あえてなのか分かりませんが、紅子がなぜこんな生き方をするようになってしまったのか、根本的なことって描かれていないんですよね。
なぜ、殺人を犯してでもきぃちゃん(棟居聖子)になりたかったのか。
個人的には、紅子が育った家庭環境にあったのではないかと解釈しています。
小さい頃から火傷の跡があったようですからね。
虐待を受けていて、そこから逃れるためだったとかなんでしょうか?
大久保悠馬は実際には紅子に危害を加えていませんでしたが、紅子が語っていた「熱湯をかけたり……」は、本当は親から受けていたものだったのかなあなんて考えてもいます。
「自分の名前から逃れただけで、過去から解き放たれたような、今まで感じたことのない解放感があった。」
「捕食(ハナカマキリの祈り)」本文より
これは真尋が「私はいづみ」と唱えていたときの発言ですが、おそらく紅子もこんな気持ちだったんでしょうね。
にしても、虫が変態で全く違う形に姿を変えたとき、昔の記憶がなくなっているかもしれないという話には驚きました。
もし、紅子がひどい家庭環境で育ったとして。
それをリセットして、すべて忘れて生きられているのであれば、ちょっと救われるような気がします。
もちろん、殺人には共感しませんけどね。
美輪和音さんのおすすめ作品
同じテイストの作品ですと、「強欲な羊」でしょうか。
こちらも、恐ろしい女が数々登場します…
ちなみに、「捕食」よりはグロくない気がします。
恐ろしい女たちで思い出しましたが、カマキリは交尾の後にメスがオスを食べるっていう生態も有名ですよね。
↓ネタバレ感想はこちら
同じく長編小説だと、個人的に好きなのは「ウェンディのあやまち」。
こちらも終始不気味な雰囲気が漂っています。
4つの視点で物語が進むんですが、登場人物たちの繋がりが見えた瞬間が本当に気持ちいいです。
ホラー要素は抑えめですが、一読の価値ありです!
↓ネタバレ感想はこちら
まとめ
以上、美輪和音「捕食(ハナカマキリの祈り)」の感想でした!
ラストシーンって、皆さんどう解釈しています?
【登場人物名】のシーンって、すべて紅子視点だと思うので、ラストの【不破真尋】は紅子だと思うんですが…
私は真尋は生きていて、紅子は勝手に真尋の名前を借りて海外に行ったと都合の良い解釈をしていますw
だって、真尋と加地に幸せになってて欲しいんですもん(笑)
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