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【感想・ネタバレ】「暗黒の羊」美輪和音|因果で繋がる悪夢

美輪和音さん「暗黒の羊」の感想です!
ネタバレ含みますので、未読の方はご注意ください。

「暗黒の羊」内容

【あらすじ】
轢き逃げや通り魔事件の動画をSNSにアップしたことから死の女神と崇められ、過激な動画の投稿がやめられなくなり、暴走してゆく女。仲間外れの黒い羊になることを恐れ、仲間の死を願う女子高校生。家にいる男は夫ではないと怯える妻と困惑する隣人。年齢も育ちも違う羊たちの運命が交錯し、そして絡み合う。その影に蠢くのは、“羊目の女”なのか。かつて美人姉妹が殺し合ったという、いわくつきの洋館で、“羊目の女”に「私の身代わりの羊は××です」と殺したい人間の名前を三度唱えると……。『強欲な羊』の恐怖はまだ終わっていなかった。著者の真骨頂を文庫オリジナルで贈る。

Amazon.co.jp「暗黒の羊」

強欲な羊」の続編にあたる連作集。

前作同様、今回も腹黒い女たちを描いた5作の短編が収録されています。

前作未読の方は、読んでから読むのがおすすめ!

↓ネタバレ感想はこちら

「暗黒の羊」感想(ネタバレあり)

おすすめ度:★★★★☆

前作を読んだときに衝撃が大きすぎたのがあって、個人的な好みは「暗黒の羊」<「強欲な羊」。

でも、おそらく今作の方が怖さは増しています。
出てくる登場人物たちがまあ、そろいもそろって狂ってる(笑)

その狂ってるのが一見わからないのが、さらに怖いんですよね…

今回も緻密な叙述トリックにまんまと騙されました。

★各話・登場人物のつながり

「暗黒の羊」には5作が収録されていますが、各話の内容と登場人物がかなりリンクしています。

前の話で描かれた伏線が次の話で回収されるなど、各話とのつながりを楽しめました。

つながりを整理するとこちら↓
(他の人物とつながりが深い人物のみピックアップしています)

すごい入り組んでるな、これ・・・(笑)

この関係図とあわせて、各話の感想を書いていきますね!

炎上する羊

↑関係図上だと、この辺りの人物が登場。

承認欲求を満たしたいがために、事件や事故などの過激な動画をアップしてしまう女性の物語です。

過激な動画は投稿しないとしても、SNSでたくさん「いいね!」をもらったり、フォローされたりを願う気持ちには共感しますね。

このエピソードで分かりやすい悪人は穂乃花ですが、信隆桐生も悪事に走っていたというオチ。

桐生と穂乃花ができてるのかな〜というのは、2人がドライブに行ったあたりから予想してました(笑)

美夜がもっと絡んでくるかと思ったのですが、結果的に1番可哀想でしたね、、

暗黒の羊

表題作。
主人公の美月拉致事件に遭ったことから話が始まります。

事件後、学校に戻った美月は仲良しだった同級生から悪口を言われ、居場所を失っています。

何かをきっかけに仲間外れになることって、女子同士の交友関係にありがちですよね、、

学校という閉ざされた空間にいる学生たちにとって、これはかなり深刻な問題。

仲間外れにするターゲット=黒い羊を一緒に攻撃することで、周り=白い羊は自分は大丈夫だと安心できるっていう心理もなんとなく分かります。

そして、この話は玖理子が亡くなってからの展開が恐ろしい。

美月は白い羊であって黒い羊
白鳥であって黒鳥でしたね。

中盤からはずっと美月視点で話が進むので、この二面性が見抜きづらい仕組みになっています。

まあ、美月が静香や玖理子を排除したのは、あくまでダンスを成功させたいためだったんですが…
ちょっと行き過ぎちゃった感じですかね。(それがまさに“暗黒”なのか…)

病んだ羊、あるいは狡猾な羊

隣人が殺害されたかもしれないと語る女性の話。

前作の表題作「強欲な羊」を思わせる独白形式です。
(ラストのみ、事件を調査する探偵からの視点)

なので、最初から主人公を疑って読みました。
2回も同じ手には引っかからないぞと(笑)

妄想性人物誤認症候群について詳しい記述がされ始めた段階で「これは絶対意味があるぞ」と思ったのですが、案の定でした。

主人公の火石繭子は、妄想性人物誤認症候群の中のフレゴリ症候群
隣に住む灰原省吾を、自身のファンであった柊優が変装しているものと思い込んでいました。

ストーカーが繭子自身であったことは、見抜けませんでしたね、、

同時に玖理子の兄「ショウちゃん」が灰原省吾であったことも、途中まで全く気づけませんでした。

ラストはすでに省吾、そして柊優も殺されているのではと思わせる怖さ。

読んだ後に、「病んだ羊、あるいは狡猾な羊」ってタイトルにものすごく納得しました。
狂ってて悪賢い繭子を表すのに、これ以上にぴったりのタイトル思いつきません。

不寛容な羊

大雪の中、小屋を訪ねてきた謎の男の話。

ここでようやく、「暗黒の羊」の美月の拉致事件について詳細が明かされますね。

監キングはすでに死亡していて、美月は山小屋の住人たちによって助けられていました。

そして、カミーラ、イーダ、アン・マリーとの再会に嬉しくなった話でもあります(笑)
(前作「強欲な羊」の「ストックホルムの羊」に登場)

また、「病んだ羊、あるいは狡猾な羊」に登場した「ひつじ軒」の料理人がヨハンナだったことにも驚きました。
これは気づけないってー!

因果な羊

最終話は、「羊目の女の都市伝説」の元凶である洋館が舞台。

前作「強欲な羊」の最終話「生贄の羊」同様、各話に登場した人物たちとの再会が楽しめる話です。

メインの登場人物は、「炎上する羊」に登場した果歩子と、演劇部時代の先輩である真行寺

「病んだ羊、あるいは狡猾な羊」のラストにちらりと登場した工藤も、この話では大いに活躍してくれます。

最終的に、真行寺は「病んだ羊、あるいは狡猾な羊」のストーカー犯・火石繭子だったことが発覚。

灰原省吾は生きていたものの、足を切断され牢に閉じ込められていました。

それ以外にも、工藤が亀田静香を追っていたり、小屋に逃げて来た男の恋人が果歩子だったりと、さまざまなつながりが見られる作品でもあります。

真行寺って、たしかこの洋館に住んでいた一族の名前ですよね…?

真行寺繭子(火石繭子)は“羊目の女”と親戚ってことなんでしょうか…?
そこがちょっと謎でした。

まあ、果歩子が助けを呼びに行けたのかも曖昧で終わっているので…
きっとあると思われる、次作を楽しみに待ちましょう(笑)

美輪和音さんのおすすめ作品

美輪さんは、人間の負の面を描くのがとても上手いです。

「強欲な羊」「暗黒の羊」シリーズを読み終えた方は「捕食(ハナカマキリの祈り)」や、

ウェンディのあやまち」などもおすすめです。

どちらも不穏な雰囲気と、怒濤の展開を楽しめるはず!

↓「捕食(ハナカマキリの祈り)」ネタバレ感想はこちら

↓「ウェンディのあやまち」ネタバレ感想はこちら

まとめ

以上、美輪和音「暗黒の羊」の感想でした!

ラストの果歩子が無事だったのかが、、本当に気になる、、
羊シリーズの続編に期待しています。

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きらり
  • サイト「KIRARI」の中の人。
    読書が好きで、読んだ本の感想を投稿しています。